2022-03-24から1日間の記事一覧
伊原さんは、相沢さんとはタイプが違い、物静かでおとなしい感じの方だった。 うつで繰り返し入院している、とおっしゃてっいた。 昼間は起きて本を読んだり、庭園で散歩をしたり手紙を書いたりしていた。 私自身がそうだったのだが、うつが酷いとトイレに行…
同室の相沢さんについて書こう。今まで待合室で精神科の患者さんと 居合わせたことはあったが(患者図鑑1~4)親しく言葉を交わしたのは 同室になった相沢さんと伊原さんが初めてだった。 相沢さんはショートカットの似合う40代くらいの女性で、はきはきと…
カウンセリングにも色々な派があるようで、七瀬先生も「この病院に 所属するカウンセラーも人によって若干やり方が違うかもしれませんね」 とおっしゃっていた。 七瀬先生のそれはロジャーズの来談者中心療法に一番近いという。 この療法の基本的な考えは、…
今までで医療面では五藤先生一人に支えて来てもらっていたが、ここで七瀬 先生と言う援軍を得たのは非常に心強かった。一本の柱が二本になったのだ。 七瀬先生と五藤先生は私の情報を共有していて、七瀬先生に伝えた事は 五藤先生に、五藤先生の診療方針は七…
カウンセリングは一回あたり50分なのだが、7年間(当時で)溜まりに溜まった 気持は到底伝え終えられるものではなかった。 「もう時間なのですけれど、また次の時に話を聞かせて下さいね」 七瀬先生は微笑んで初めてのカウンセリングは終わった。 怒涛のよ…
七瀬先生は、30半ばくらいに見える髪をシニヨンにまとめた小柄な女性であった。 「初めまして。七瀬です。五藤先生からお話は伺っています」 七瀬先生と対峙して、何か話そうとしたら、まず涙が流れてきた。 先生は黙ってティッシュを差し出した。 「私は……