そううつ色々図鑑ーメンヘラ歴1/4世紀ー

双極性障害持ちゆえに出会った色々な人たち、出来事について。精神科入院生活の有様。サイテーな家事・育児についても。

ヘルパー図鑑11 (長野さん)孫替わりとハムスター

有償家事援助サービスでは物のやりとりを禁じている。湯茶の接待さえ避けるよう

言い置かれている。

私もお茶を出したこともなけば、頂き物のお裾分けも控えていた。

しかし長野(仮名)さんは、そのルールをバリバリと乗り越えてくる人だった。

長野さんも60代に見える方で、お孫さんがうちの子供と年が近いとおっしゃっていた。

「安井さんのお子さんの事、他人事に思えなくて」と同情し、心配して下さった。

それは有難いのだが、援助を始めてほどなく、怒涛のように長野さんから

プレゼントが持ち込まれるようになった。お孫さんのおさがりのおもちゃ、

服、本、お菓子。

決まりなので頂けません、と断ると「内緒内緒。私、お子さんたちのお役に立ちた

くて」

ご厚意は大変ありがたいのだが、ルールを破るのは気が進まない。第一内容が食べさせたくないお菓子、着させるのにはいまいちの服、寧ろ買わないようにしているおもちゃなのである。

毎週援助に来るので、チェックされる気がして捨てるわけにもいかない。

毎回にこにこして「プレゼント」を持ってくる長野さんに頭を痛めていた。

そんなある時、予想外の贈り物を持って彼女は現れた。

リビングに入ってくるとおもむろに何かを取り出した。

「孫のところにハムスターの赤ちゃんが生まれたの!お子さんたちに差し上げたいと思って」長野さんは満面の笑みでケージを差し出した。思ってもいないプレゼントに私は完全に面喰ってしまった。

「あの、うちは今まで生き物を飼ってなくて」

「ハムスター、かわいいのよ。孫たちもとってもかわいがってるの。安井さんのお子さんたちもきっと喜ぶわ」

長野さんは最高のプレゼントと信じて疑っていない。

確かにハムスターを見れば、子供は嬉しがるだろう。しかし子供が継続して生き物の

世話をきちんとするとは思えない。結局は私が担うことになる。一から餌や飼育道具も買いそろえなくてはならない。

食事作りにすら苦労し、子供の世話、自分自身の世話が難しい状態なのに動物の世話が加わるなんて、到底無理だ。

さすがに今回のプレゼントだけは受け取る訳にはいかなかった。丁重に辞退して

(長野さんは何度も遠慮しなくていいとハムスターの可愛さを繰り返していたが)

持ち帰って頂いた。

長野さんはそれから少し経って、ご主人の体調の問題で「つばき」を退会されたので

、うちに来ることはなくなった。