ヘルパー図鑑16 (福岡さん)家事超初心者ー最初で最後のチェンジー
猪口さん
が腰を痛めたとかで、急きょ代わりのヘルパーが入る事になった。
「福岡(仮名)と言うのですけれど、まだ『つばき』に入って日が浅いの
です。宜しくお願いします」と事務局から連絡があった。
聞けば、福岡さんは調理は出来ないとの事。「お掃除ならできますので」
と断りがあった。本当なら、料理を頼みたいが家も片付いていないし、背に腹は代えられない。福岡さんに来ていただく事になった。
現れた福岡さんは、私のヘルパー利用歴初めての男性だった。何人ものヘルパーに来て頂いたが、後にも先にも男性は初めてだった。しかも20半ばくらいに見え、こんなに若いヘルパーも初めてだった。
福岡さんはぽっちゃりとした体形で少し猫背だった。小さい声でもそもそと話した。
「初めまして。あの、僕料理は出来なくて」
「はい、事務局から聞いていますので。リビングとキッチンの片づけをお願いできますか」
キッチンは洗い物が山積みで、リビングは洗濯物などで散らかっている。
洗剤の場所、スポンジや布巾、その他掃除道具の場所を教えた。
普段なら、ここで私は寝室に引き取ってしまうのだが、福岡さんは
自信がなさそうに「えーと、お皿これで洗っていいですか?」とマジックリンを
手にした。それは油汚れを落とすときに使ってください、ここに食器洗い用の
洗剤がありますからと伝え、不安を感じつつ寝室に入る。
やはり心配になり様子を見に行くと、「あのー、これ洗っても落ちなくて」と焦げの
ついた鍋を見せられた。ここにクレンザーがあり、金だわしがあると説明。
洗いあげられた食器を見ると、ここそこに洗い残しがあったり、洗剤の泡がついていたり。
そこから、私は2時間つきっきりで福岡さんに家事を指南するはめになった。
福岡さんは家事能力がほぼゼロなのだ。お米を洗剤で洗ってしまうレベルだ。子供に教えるように手撮り足取り教えてあげなくてはならない。私はすっかり疲れてしまった。
猪口さんの腰の調子がはかばかしくないとかで、次の週も福岡さんが来た。
前週私が教えた事は全てリセットされていて、一から教えなおしだ。
どうしたものかと思っていた矢先、堪忍袋の緒が切れる事件が起きた。
当時、火曜日に猪口さん、金曜日には長野さん
という体制で援助に入って頂いていた。次に長野さんが来てくれる日、金曜に
たまたま私の用事が入り、キャンセルしたい旨事務局に伝えていた。
ところがその用事がなくなったので予定通り長野さんに来てもらいたい、
と福岡さんに伝言を頼んだのだ。
しかし、金曜日、待てど暮らせど長野さんは来ない。しびれを切らして
「つばき」に電話をすると、福岡さんに伝えたはずの伝言を、事務局では聞いていないとの事。長野さんは別の予定を入れてしまったとかで、結局その日は誰も来れなかった。
その次に福岡さんが来た時、伝言の件を問いただした。
「ええっとぉ、僕事務局には毎日行く訳ではなくてー」
福岡さんは「つばき」の人間なのだから、福岡さんに話した時点で私は連絡が済んだと思っている。もし事務局に行かないのなら電話なりなんなりで伝える責任
があるのではないのか。
ヘルパーが来なくて、体がきつい中無理をした苛立ち、今まで色々手を取らされた
鬱憤もあり、口調もきつくなった。
しかし福岡さんは自分は毎日事務局に行く訳でないので、を繰り返すだけで、何が問題なのか全く分かっていなかった。
もう私も我慢の限界だ。、初めてヘルパーの出禁、チェンジを要求した。