ヘルパー図鑑17 (長崎さん)開かずの間と職務放棄
「つばき」利用からしばらく経つと、少しずつ家の中も片付いてきた。そこで今まで
手つかずだった和室にを何とかしようと思い立った。
和室は行き場に困った物を取り敢えず放り込む場所になっていて、足の踏み場もなかった。中にある物すら正確に把握できていない。
少し体調の良い日が続き、一念発起して和室の「要る物」「要らない物」を分けた。
要る物をきちんと収納する力までは、さすがに残っていないが、ともかく捨てるものを取り出した。
ちょうど長崎(仮名)さんが来る前日、その作業が終わった。40L入りのゴミ袋と
縛った古本の束を複数。長崎さんにはそのゴミを一階のゴミ置き場に出してくれる
ようお願いした。ところが、三回くらい下に降りると「あー、大変だ。もう
腰も痛いし、今日はこの辺でやめます」一方的に終了制限されてしまったのだ。
しかも、ゴミ出しで疲れたから、もう帰りますと去って行った。確かに長崎さんは年配(60代)だったけれど…
長崎さんは「安井さんのところでゴミ出しをたくさんさせられて、
大変だったから途中でやめてきた」と堂々と事務局で告げたらしい。事務局は驚いて
長崎が申し訳ありません、と謝って来た。
次の時は長崎さんは渋々ながらゴミ運びをし、開かずの間だった和室は少しだけ
ましになった。