そううつ色々図鑑ーメンヘラ歴1/4世紀ー

双極性障害持ちゆえに出会った色々な人たち、出来事について。精神科入院生活の有様。サイテーな家事・育児についても。

ヘルパー図鑑19 (徳島さん)徳島さん定食ー手持ちレシピは一種類?ー

家族、特に子供に栄養のあるしっかりした食事を取らせたい希望が強く

食事作りをお願いするのが主眼で「つばき」にお願いした。

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しかし、今まで上げて来たエピソード以上に、ヘルパーと食事に関する仰天エピソードは多い。

徳島(仮名)さんは70近くに見える、細身でグレイヘアの「上品なご婦人」という形容がぴったりの人だった。

蚊の鳴くような声で挨拶し、躊躇いがちに部屋の中に入って来た。

「御夕飯のお支度をするんですよね?」

「はい。冷蔵庫の中にあるもので適当にお願いします」

徳島さんは不安気に冷蔵庫を開け、中を調べ始めた。と、急に安心したような顔つきに

なって「分かりました」と頷いた。

その日徳島さんが作って下さったメニューは、鯵の塩焼き ほうれんそうのお浸し

と煮物(じゃが芋)だった。

次の週、徳島さんはまた心配そうに冷蔵庫を開けて、また安堵した表情になった。

そしてその日のメニューも殆ど前週と一緒。さんまの塩焼き ほうれんそうのお浸し

煮物(里芋) だった。

その次の週は、鯵の塩焼き、小松菜のお浸し 煮物(じゃが芋)だった。

魚の姿焼き。青菜のお浸し。芋の煮物。毎回毎回、それが不動のラインアップ。

徳島さんが不安そうに冷蔵庫を見ていたのは、姿焼きにできる魚、青菜、芋

をチェックしていたのだろう。

徳島さんがうちに来始めてから、一か月二か月と経った。そして冷蔵庫には

他に肉も切り身の魚も、野菜もたくさんの種類が入っているのに徳島さんの

献立は頑ななまでに変わる事がなかった。

徳島さんほどのお歳で手持ちのレシピがないとはちょっと考えにくい。おうちで毎日毎日決まったお食事を召し上がっているのだろうか。他の料理は一切されないのだろうか。魚と青菜と芋があれば、一生暮らしていけるのだろうか。

もし何十年とそのメニューだけ作り続けてきたとしたら、調理法を鍛錬しつくして

極上の三品になっているはずだが、ごく普通の、一般的な味だった。うちの食材や調味料が悪いのかもしれないけれど。

ちょっといたずらして、敢えて冷蔵庫から魚・青菜・芋を排除してみたら、何を作って下さるのかな?とたくらみを考えたりもした。

徳島さんには一年以上援助に来ていただいたが、結局「徳島定食・3点セット」以外の

料理は味わわず仕舞いであった。