ヘルパー図鑑21 (福井さん) こんにゃくの無しの豚汁
福井(仮名)さんは、徳島さん
のようにメニューが一種類と言うことはなかったが、毎回食事に着手する前に
ひと騒ぎあった。
私はヘルパーさんが来る前には、いろんな食材で冷蔵庫を満たすようにしている。
とはいえ、用意されていない食材も当然ある。
福井さんの来る日はこんな展開だ。福井さんは冷蔵庫を開け、中身チェックをし
「今日豚汁作ろうと思うんですけど。こんにゃくが無くて。こんにゃく無いですか?」生憎こんにゃくは買い置いていない。その旨伝える。福井さんは「こんにゃくがない!豚汁が作れない!こんにゃく こんにゃく」と声高に言い立てる。しかし、わざわざそれを買いに行く必要を感じない。何度騒いでもこんにゃくが湧いて出てくる訳でもない。こんにゃく無しの豚汁でもいいし、全く別のメニューでも何の問題もないのだ。私が「こんにゃく要求」に取り合わないと、やっと諦めて違うメニューを考え始める。
八宝菜を作りたいけどきくらげがない。ムニエルを作りたいけどレモンがない。
毎回のように彼女が必要とするものが何かしら足りなくて、ひと悶着もふた悶着もある。こちらはその食材抜きで作ってくれても、一向に構わない。料理を口にする側からは全く問題ないのだが。彼女の脳裏に浮かんだメニューをどうしても作ろうとし、その為には一つも材料が欠けてはいけないという一徹さから繰り広げられる「○○がない!」「××がない!」には手を焼いた。あるもので作れるものを作ってくれれば十分なのだ。
材料が一つ二つ欠けていても、大体は食べられる代物には仕上がる。