そううつ色々図鑑ーメンヘラ歴1/4世紀ー

双極性障害持ちゆえに出会った色々な人たち、出来事について。精神科入院生活の有様。サイテーな家事・育児についても。

スピリチュアル図鑑4 (青森先生)医者も頼る?謎の宇宙パワー

今回はスピリチュアル「グッズ」編、でなく「人」編。私の苦しみを解決してくれる「人」として探したのは、霊感占い師、霊能者、チャネラ―、スピリチュアルカウンセラーと言った人々だった。

占い師の中でも「霊感」としたのは、西洋占星術や手相でうつが治るようにはあまり思えなかったからだ。

霊感を用いた占いや霊能者が私の悩みを解決してくれるように思えた。

しかし、大学生の頃友人とノリで恋愛相談に行ったくらいなので、一体どこに私の求める占い師や霊能者がいるのか見当がつかなかった。

 

ある時雑誌を読んでいて「宇宙とコンタクト!パワー注入で諸悩み解決!」という記事を目にした。料金は30分5000円。

あまり高額な対価を要求するところは避ける、のが自分の中の決まりだった事は書いた。占いは一時間で10000円が相場、高くても30000と決めていた。ここは価格的には許容できる。

散々迷った末、青森(仮名)先生に相談しに行く事に決めた。

青森先生の事務所は、繁華街のビルの上階にあった。「占いの館」と言った風情でも

「治療所」という格好でもなく、ありきたりのオフィスの体だった。

名前を告げて、面談室で待っていると青森先生が入って来た。小太りのごく普通の中年女性だ。大げさなメイクや衣装を着けている訳でもなかった。

「さ、お話を聞きましょう」と水を向けられたが、気になったのが面談室のドアが

全開のままであった事だ。ちなみにコロナ前の話である。とても個人的なデリケートな事を話そうとするのに、

これでは事務室の人に筒抜けだ。しかし青森先生は構わず話続けるので、その件に

ついては諦めた。

子供を産んでからうつでずっと辛い事。入院まで経験したけれど、はかばかしくない。

何とかしてうつと縁を切りたい。

一通り話し終えると30分は経っていた。「あのね、宇宙パワーを注入すれば良くなると

思うよ?私が毎日遠隔であなたにパワー送ってあげる。そうね、三か月も送れば

大分よくなるよ」

宇宙パワー

宇宙パワーについては、雑誌にも書いてあったが、30分の中で送ってくれるのかと思っていたら違うようだ。

「一か月で30万」

椅子からすっ飛びそうになった。一か月で30万!?三か月で90万!??

私が啞然としているのを感じ取ったか、青森先生は「あのね、私の顧客の中には

医者もいるのよ。医者自身でも直せない体調不良が宇宙パワーで治る訳ね」

そんな雲をつかむような話… 青森先生に、では宇宙パワーの一端を体験させて

下さい、というと「契約した人でないとパワーは送れない」と言う。

料金の高さ、いかがわしさ。うさんくささ、これは離脱するしかない。

「結構です」とパワー注入を断って席を立とうとすると「あなたね!パワー注入しないと良くならないよ!」と追い打ちをかけてきた。

ますます不信感が募る。5000円だけ支払ってビルを後にした。

結局30分5000円は、宇宙パワー30万コースへの入り口の営業に過ぎなかった。

そして「宇宙パワー」がどんなものなのか一切示されず、パワーを受けないと

良くならないなんて、脅しか詐欺ではないか。

とは言え、面談中に私の心が全くぐらつかなかったかと言うとそうではない。確かに高額ではあるけれど、得体のしれないパワーではあるけれど、この施術を受ければ治る…?と0.1%くらいは思った。青森先生が顧客にいるという医師が実在するとしたら。

でもやっぱり色々おかしい。理性を保てたのは幸いだった。

とは言え、青森先生の所へ行けば良くなるかもしれないという期待が打ち砕かれた絶望、詐欺まがいにひっかかりそうになったことへの情けなさで酷い自己嫌悪に陥った。

最寄り駅に歩いて行く途中、涙が止まらない。拭う気力もない。嗚咽もしていたと

思う。ボロボロと泣きながら、左右にフラフラ歩く私の姿はよほど異様だったのだろう。すれ違う人が、振り返って見ていた。