そううつ色々図鑑ーメンヘラ歴1/4世紀ー

双極性障害持ちゆえに出会った色々な人たち、出来事について。精神科入院生活の有様。サイテーな家事・育児についても。

スピリチュアル図鑑15(鳥取先生)奇妙なコミュニティ

悩み相談

 

SNSで「○○県の鳥取(仮名)先生のに見て貰って良かった」という感想を見かけて、私は瞬時に飛びついてしまった。

発信者と連絡を取ると、鳥取先生は霊感でずばずば当ててくれて、とても信頼できる存在だそうだ。私の住んでいる所と先生の住む○○県は遠くはない。ただ、県の中でも先生宅はかなり辺鄙な所にあるようだ。電車の数も少なく、時間はかかるが行って行けない距離ではない。電話番号を教えて貰い、先生に電話をかけた。

自宅で鑑定をしているとの事。料金も確認したが法外ではなかった。

 

さっそく予約をいれて、最寄りの××駅に降りる。先生宅近くまではバスも通ってはいるが、数時間に一本しかない。駅を降りた人たちは、みな迎えの車で去って行く。タクシーも見当たらず、困って駅員さんに聞くと「この駅の辺はタクシー一台しかありませんよ。△△タクシーです」と言って電話番号をくれた。タクシーの運転手さんは自宅にいて、「ちょうと飯を食い終わった所でね、すぐ行くから」と15分ほど待たされた。

「●●町●丁目のの鳥取さんという所に行きたいのですけれど」

「あー、鳥取さんね」運転手さんは分かっているようですぐ連れて行ってくれた。

しばらく車を走らせると右手にコンクリートの壁が見えて来た。「この壁、鳥取さんの家の」と運転手は教えてくれた。

鳥取先生宅は、豪邸という程ではないが、かなり広い。玄関に辿り着くまで壁沿いに車が走ったが窓に不思議な文字だか絵だかを描いた半紙が何枚も貼ってあるのが見えた。

入口でおろしてもらう。入口の前の開けたスペースに車が何台も停まっていた。5~6台はあっただろうか。ナンバーから、近隣の車だと察せられた。

インターフォンを押すと、中年の女性が返事をしながら出て来た。「▲時にお約束

してあります安井です」と言うとにこやかに奥へ案内してくれた。

広めの応接室というのか、居間のソファにセミロングの髪の女性が座っていた。この人が鳥取先生らしい。年齢は若いようにも、歳を重ねているようにも見えなんとも判じ難い。

その居間には、停めてあった車に乗って来た人たちだろうか、5~6人、いやもう少し多かったか女性が座って雑談していた。私を案内してくれた女性もその話の輪に加わった。

大勢の人が居る前で個人的な事を話すのは気が引ける。けれど彼女らは私たちのやり取りに耳をそばだていている風ではなく、席を外す風もなく自分たちの話に興じている。

先生も彼女たちがそこにいる事を全く気に留めていないようだった。

もともと顔も名前も知らない相手であるし、地理的にももう顔を合わせる事はないと気にとめない事にした。

「霊感占い」「霊感タロット」を謳う人は、霊感があるけれどタロットやペンデュラム、ルーンと言ったツールを使う。しかし鳥取先生は(茨城先生もそうだったが)

 

一切道具を使わない。唯一、名前を書いて下さいと言われただけだ。名前を書いた紙を

手に持ち、集中する。その後、霊感を持って得た答えを伝えてくれる。

私は、「ぴたりと当てる」「明確に指摘する」寸鉄のような言葉を事を期待していたのだが、鳥取先生の言う事は、いかようにも取れる曖昧模糊とした内容で、今一つ

物足りなかった。一番聞きたかったうつへの対策も不明瞭な回答だった。

家族の名前も書けば、今後を見てくれるというので書いたが、少なくとも長男に

関しての指摘は結果的にはずれた。

 

鳥取先生宅への訪問の収穫は、霊視(?)の結果よりも寧ろ先生宅での小さなコミュニティを見た事にあった。彼女たちは、「見える」「託宣をくれる」鳥取先生の所に集い、悩みを相談し癒されている。先生宅は全く宗教色はなく、神棚すら見かけなかった。鳥取先生も神様然としてはいない。女性たちとは、いわゆる「ため口」で話していた。でも、明らかに鳥取先生という小さな神様、もしくはシャーマンが核となり、彼女を頼って人々が集まっているのだ。

その後全く偶然、ふとした事から私の知り合いが鳥取先生宅の地域に親戚がいるという話をした。

「この時代にね、面白いんだけど、タヌキや狐に化かされたとか、そんな日本昔話みたいな話が今でもあの辺にはあるのよ」

医学、心理学などの諸学問がまだ発達していない時代、もしくは交通の便が悪く簡単に専門家に診て貰う事が難しい時代、イタコやユタ、拝み屋のような地域の相談者が

果たした役割は大きい。鳥取先生はそのような存在なのかな、と思って見た。

先生の託宣が当たろうが当たるまいが、自分の辛さを吐露して何かしらの道筋を

示してくれる存在は、いつの時代にも必要とされるのかもしれない。