そううつ色々図鑑ーメンヘラ歴1/4世紀ー

双極性障害持ちゆえに出会った色々な人たち、出来事について。精神科入院生活の有様。サイテーな家事・育児についても。

患者図鑑36 談話室の新聞

新聞

男子棟女子棟分かれているが、その間に談話室があり、そこは男女とも利用する事が出来た。面会者も病室のあるエリアまでは入れないので、ここで患者と面会する。

談話室にはソファ、テレビ、新聞が置かれていた。新聞は全国紙で毎日朝に当日の

物に変えられていた。

これも既に記事に書いてきた事だが、週一回の診療の他は食事・入浴・作業療法(任意)以外は特に決まった予定が無いので時間に余裕がある。

私は空いた時間、談話室の新聞を読むことを日課にしていた。しかしそれにあたって強力なライバルがいた。男子病棟の患者、小野寺さんである。70代くらいに見える小野寺さんはほとんどの時間を談話室で過ごしている人だった。テレビはまず見ない。いつ談話室に行っても、決まった席で新聞を読んでいる。

新聞を端から端まで読むのに人によってかかる時間は違うと思うけれど、小野寺さんは

1時間経っても2時間経っても新聞を読み続けていて離さない。ある時ずっと観察してみた。1面から読み始めて最後のテレビ欄まで読み進め、終わりか… と思ったらまた1面に戻っていた。どうやらぐるぐる最初から最後まで何度も読み返しているようだ。

しかし、共用の新聞だし小野寺さんに独占されても困る。私は看護師に相談した。

看護師が小野寺さんに話をしてくれたようで、面白い形で解決した。毎日最新の

新聞に入れ替え、前日の新聞は引っ込めてゴミ置き場に持って行くのだが、

小野寺さんには前日(または前々日)の新聞を渡すようになったのだ。小野寺さんは

心行くまで新聞を読んでいる。最新の新聞は、私を含む読みたい人が手に取れるようになった。

 

しかし、小野寺さんは、本当に記事を読んでいたのだろうか。ある時、私は談話室で「当日の」新聞を読んでいた。小野寺さんは昨日の物を。ちょうとテレビがついていて複数の人が見ていた。お笑い番組だったのだろうか、絶えず大きな笑い声が響き、私は正直記事が頭に入らなかった。しかし小野寺さんは淡々と動じることなくいつものように新聞に目をやっていた。

(文中は全て仮名・仮称です)