そううつ色々図鑑ーメンヘラ歴1/4世紀ー

双極性障害持ちゆえに出会った色々な人たち、出来事について。精神科入院生活の有様。サイテーな家事・育児についても。

患者図鑑39 病院の怪談その2

前回、北野氏の死因としてまず自殺を疑ったと書いたが、精神科在院患者の死因第一位は自殺というデータがある。

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入院仲間でも自殺を試みた人は何人もいたし、入院中も一度自殺未遂があった。小谷さんという30代の女性だが、夫との不仲(DV、ギャンブル癖など)に悩み、しかし離婚に応じて貰えないと酷く悩んでいた。

部屋は違っていたが愛想が良く、人懐こい彼女と良く世間話をしたものだ。

ある時、夕飯が終わり、皆が食堂でテレビをみたりお茶を飲んだりくつろいでいる中、突然「看護師さん!早く来てください、小谷さんが!」という叫び声が響いた。

みんなびっくりして声のする方に駆け寄ったり顔を向けたりする。私は比較的食堂の端の叫び声から近い位置に座っていた。驚いて声の方に足を向けると、小谷さんが廊下に倒れていた。うつぶせの彼女の下に小さな血だまりが見えた。

看護師が駆け付け、小谷さんに声をかけながら他患者に部屋に引き取るように言った。

部屋のベッドからも、廊下で看護師や医師たちがざわざわしているのが聞こえる。気が気でなかったが、部屋で大人しくしているしかなかった。

翌朝、顔色が悪いながら小谷さんが朝食に顔を見せたので安心した。小谷さんから

「昨日はご心配かけました」と声をかけてきた。ちょうど夫から、彼女を傷つけるような酷い内容のメールが来て発作的に手元にあったはさみで体を突いたのだと言う。

本来刃物は持ち込み禁止だが、入院時のチェックも正直厳しくないし、入院後外出時などに購入し持ち込むことは可能な状態だった。はさみは無いと何かと不便なので、彼女も単に物を切ったりするのに持ち込んだのだという。それが夫からのメールでパニックになった時、目についた自分を傷つけられる道具がはさみだったという訳だ。怪我は大したことはなかったらしく「もう大丈夫です」と彼女は弱弱しく笑った。

(文中は全て仮名・仮称です)

はさみ