そううつ色々図鑑ーメンヘラ歴1/4世紀ー

双極性障害持ちゆえに出会った色々な人たち、出来事について。精神科入院生活の有様。サイテーな家事・育児についても。

患者図鑑46 VIP患者

仕事

食堂で雑談していた時、「情報通」の島崎さんが「ねえ、W社って知ってるよね?」

と話を振ってきた。勿論、W社は誰もが知る大企業だ。

「男性棟の個室にW社の寺池社長が入院しているんだって」と言う。

私は思わず「えっ」と声を出してしまった。あの有名なW社の社長が、同じ屋根の下、精神を病んで入院しているとは。

「本当なんですか?」「男性病棟の人に聞いたの。一番高い個室に居るらしいよ」

島崎さんは「古参」だけあって、男性病棟の古参とも仲が良く色々情報を仕入れてくるようだった。

 

寺池社長は、院長が主治医。時々自宅にも帰っているけれど、病院から出勤する事も

ある。奥さんが良く見舞いに来ている。仕事の都合か、秘書も時々顔を見せている由。

B病院は精神科ではそこそこ定評があるが、W社の社長ともなればもっとセレブな病院や大学病院に入院しないのだろうか。院長はそこまで名医なのか?

 

総合病院に入院すれば、何科で入院したかごまかせるけれど、B病院は精神科単科病院。いくら精神疾患への理解が進んで来たとは言え、社長が精神科単科病院に入院しているのは社長という地位からして何か差しさわりは出ないのか。

少々年季の入ったこの病院で、同じ時間に寺池社長が同じ病院食を食べているなんて、雲の上のような存在の社長を身近に感じるような不思議な気分だった。

手元のスマホで寺池社長を検索してみる。落ち着いた、温厚そうな顔立ちだ。勿論

健康問題について言及した記事は見当たらなかった。

 

ある時、外出から帰って来て出入り口で男性とすれ違った。何気なく顔を見ると

ネットで見た寺池社長その人だった。「あっ」と声が出そうなのを飲み込んで

軽く会釈した。寺池社長は仕事に出かけるのか、スーツ姿であった。

(文中は全て仮名・仮称です)