患者図鑑76 強迫性障害1
という訳で、私の外泊は失敗に終わり、次の外泊やそれに連なる退院はお預けになった。
また入院生活が続く事になるので、患者図鑑に戻る。
「強迫性障害」という病名を聞かれた事はあるだろうか。
厚生労働省のホームページに記載があったのでリンクを張っておく。
「強い不安やこだわりによって日常生活に支障が出る」病気だが、落ち込みや希死念慮といった心の中の動きだけでなく、目に見える行動に現れるのではたにもわかりやすい。
大坪さんは、強迫性障害の他にも疾患があって入院しているとの事だったが、他の疾患が何であったかは知らない。ただ強迫性障害は、大坪さんが「これをするの、強迫性障害だから」と自ら説明していたし、その行動からも明らかだった。
例えば手を洗う。洗っても洗っても、汚れや菌が落ちた気がせず何度も繰り返す。
共用の洗面所は横に長い長方形をして、いつくか蛇口が並んでいた。大坪さんは長時間手を洗うので、他の人に邪魔にならないよう、いつも一番端の蛇口を使っていた。
みんなは備え付けの手洗い石鹸を使っていたが、大坪さんは洗いすぎで手が荒れるので自分用の低刺激の石鹸をおいていた。
今のコロナ下では皆頻繁に手を洗うけれど、普通の生活なら外出から帰った時、食事の前くらいしか手洗いはしないだろう。
大坪さんは、勿論そういう時はより念入りに何回も何回も手を洗っていたし、本当にちょっとしたことーちょっと人の物や病院の備品に触った程度でも手洗いに向かっていた。
(文中は全て仮名・仮称です)