そううつ色々図鑑ーメンヘラ歴1/4世紀ー

双極性障害持ちゆえに出会った色々な人たち、出来事について。精神科入院生活の有様。サイテーな家事・育児についても。

患者図鑑84 玉串奉奠

玉串奉奠

B病院では、カレーなどの場合を除いて食事の際にプラスチック製の箸がついてくる。

財津さんは食事の前に決まった儀式がある。箸を捧げ持って。時計回りに4回回してから食べ始める。食べ終わったら、また箸を取り4回回して終了。

何かに似ているなぁ、と思ったら神社での玉串奉奠だ。榊をくるりと回して神前に捧げる、一連の作法。玉串奉奠は一回しか回さないけれど。

財津さんに直接聞いた事はないけれど、強迫性障害の儀式行為や数字へのこだわりから

来るものではなかったのかと思っている。

もしかしたら、「食は命を頂く事だから感謝の意を捧げている」「お米には七人の神様が宿ると言うので祈っている」のかもしれないけれど(多分違う)

食堂で財津さんと私の席は比較的離れていた事もあり、「ああ、今日も玉串奉奠しているなぁ」と大して気にしていなかった。

しかし、財津さんのすぐそばに席がある、ヌシ部屋の住人の一人のぶちゃん

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には目障りで許せない事だったようだ。もともとヌシ部屋の人たちは、天上天下唯我独尊で、自分たちが絶対正義だったから、彼女たちの気に障る事は「悪」「不当」なのだった。

のぶちゃんはある時爆発した。いつものようにお箸を回し始めた財津さんに対し、席を立って怒鳴り始めた。「あんたね!いつもクルクルクルクルと目障りなんだよ!」目を吊り上げて糾弾するのだが、財津さんもさる者。どこ吹く風で、平然と箸を回しづづける。看護師さんのとりなしもあって、その場は何とか収まった。

のぶちゃんはやっぱり箸回しが気になって仕方がないようで、その後も何回か財津さんに怒号を浴びせていた。そして財津さんの方は全く取り合わずに箸を回し続けるという事が繰り返された。

最後はのぶちゃんもさじを投げ、また看護師さんも二人の席を離すように配慮したのでバトルは収まった。

箸回しは毎食、ずっと続けられていた。スプーンやフォークの時はどうなのかな、と見ているとその場合は回さず、すっと口に運んでいたのが不思議だった。

(文中は全て仮名・仮称です)