患者図鑑99 病院の中心で、愛をさけぶ1
こうやってブログを書いていると、色々な患者の事がふっと思い出される。今回はたまたま思い出した横内さんという女性患者について書く。
入院患者、上杉さんがフェイク設定で男性から人気を集め色々やり取りをしていた話は以前書いた。
それと似たバージョンの話である。
横内さんは40代の独身女性で、双極性障害で入退院を繰り返している人だった。
彼女も良くスマホをいじっていた。食堂や談話室で女性患者が良くお茶を飲みながらおしゃべりをする話には何度か触れたが、食堂の隅でスマホをのぞき込んでいる横内さんに「一緒にお茶飲まない?」と声をかけても「ちょっと待って。返信しちゃわないと」連絡を取る方に熱心であった。
段々他の入院患者達と気心がしれてくると、その大事な連絡相手について少しずつ打ち明け始めた。
SNSがきっかけでゆうじさんという人と知り合った。ゆうじさんは32歳でバツイチ(子無し)。フレンチレストランで調理の仕事をしている。野球が好きで、ルックスは広島カープの堂林翔太に似ているとの事だから、イケメンの部類なのだろう(これもゆうじさんが本当の事を言っているかは定かではないが)。
横内さんは年齢や職業(無職だった)などは偽って、ただ「病気で入院している」事だけは正直にゆうじさんに伝えたそうだ。
ゆうじさんは「大丈夫?」「何の病気なの?」「お見舞いに行きたい」「いつ頃退院できそう?」と聞いてくる。
(文中は全て仮名・仮称です)