そううつ色々図鑑ーメンヘラ歴1/4世紀ー

双極性障害持ちゆえに出会った色々な人たち、出来事について。精神科入院生活の有様。サイテーな家事・育児についても。

患者図鑑82 義経の子孫

姫君

 

芥子川さんの自慢は「私の先祖は義経静御前なの!」であった。日本史の中でも人気を誇る義経静御前。その末裔が自分だというのである。

確かに義経静御前は恋愛関係にあったし、男児も生まれた。しかし当時もう義経は罪人であったので、子供は生まれてすぐに殺されてしまったのだが…

芥子川はさんは一方的にまくしたてるタイプの人だったので、いえ、史実では子供は、と説明しても聞く耳を持たないだろう。その男児が実は生き延びたとか、いや他にも子供がいたとか主張するのだろうが、そんな事を聞いても仕方がない。

また、百歩譲って義経の子孫だとしても、芥子川さんはここでは入院患者の一人にすぎず、別に遠ーい時代の著名人物が先祖だったとしてそれが何だというのか。

ある時、食堂でテレビを見ていたら義経が取り上げられた。芥子川さんは跳ね上がるように立ち上がって「ご先祖さまだわ!」と叫んだ。みんな一様にしらけた。

何か芥子川さんの家に家系図でもあるのか、親から言い聞かされてきたのか、それとも

急に何かのきっかけで芥子川さんが義経の子孫と思い込み始めたのか。真相は

わからないけれど、彼女が強く強く自分が義経静御前の末裔と信じ、それを誇りに思っている事だけは伝わって来た。

 

しかし、まだ上には上がいる。この人の話は私は聞いただけ(私が入院した時には既に転院していた)である。芥子川さんの末裔熱はすごいですね、という話をしていたら

前にはもっと凄い人がいたよ、と言うのだ。

(文中は全て仮名・仮称です)