患者図鑑104 Place to Tryー応援ソングー
B病院の作業療法にはカラオケがあるのだが
カラオケルームではないので曲数が多い訳でも最新の曲が有る訳でもなく、
どちらかというと年配者が懐メロを歌う場となっていた。
若い世代は、ポータブルオーディオプレイヤーやスマホから音楽を聴いて楽しんでいた。
印象に残っているのは、同室だったまいちゃんだ。まいちゃんは大学を休学してたのでまだはたち前後だったと思う。いつもイヤホンを耳につけていた。
イヤホンで音楽を聴く人は分かると思うけれど、思わず聞こえてくる曲に合わせて歌を口ずさんでしまう事がある。本人は曲の中に入ってしまっているが、よそから見ると
一人で何か歌っているので変に見える事もある。
まいちゃんのお気に入りはTOTALFATの’Place to Try’だった。
「君は一人じゃない 涙越えて 君と進んでいこう 何も怖くなんてないんだ」
このフレーズを良く口ずさんでいた。夜、就寝準備に入ってそれぞれカーテンを閉めた
後、まいちゃんのところから「君は一人じゃない~♪」と聞こえてくる事もしばしばだった。
まいちゃんは、自分がこれからどうなるが、復学できるのか、社会に出て行けるのか
良く不安を口にしていた。それを払拭するために、自分を鼓舞する為に応援ソング、Place to Try を歌っていたのだと思う。私はまいちゃんに教えて貰うまでこの歌を知らなかったが、確かに聞いてみると励まされ気持ちが晴れた。
まいちゃん元気かな。今もPlace to Try を聴いているのかな。
(文中は全て仮名・仮称です)