ヘルパー図鑑4(巳浦さん) 家政婦紹介所ーアイロンがけは高度な家事?ー
卯川さんと話したのは月末だったので、その月の終わりをもって「ひまわり」
の利用は終了になった。
さて、どうするか。卯川さんの言う様に家政婦に頼むか。
今まで家政婦を頼んだ事などなかった。ネットで「家政婦紹介所」を
調べ始める。
条件として
【立地】多分家政婦さんは、自分の自宅から近い紹介所
に登録していると思われる。わが家から近い所に住んでいる人の方が何かと
便利と考えた。
【費用】うちはごくごく普通のサラリーマン家庭で、私は働いていない。
治療費や薬代の出費が常にある。費用の節約は、何をするに当たっても念頭にあった。
「たんぽぽ家政婦紹介所」(仮称)のHPでの料金は相場より、少し低いくらい、一時間当たり2500円を少し下回っていた。
【評判】
以上3点に留意して比較検討した結果、「たんぽぽ家政婦紹介所」を利用する
ことに決めた。
どきどきしながら、でも切羽詰まった状態で「たんぽぽ」に電話を入れた。
住所、家族構成、手伝って欲しい内容、来て欲しい頻度等伝える。
電話で内容を詰めながら、ふと脇を見ると山積みになった、アイロンを
かけなくてはいけない衣類が目に入った。
「食事作りもなんですが、アイロンをかけて頂きたいんですが」
「アイロンですか?えーっと、すみませんアイロンをかけられる者は
今ちょっといません」
私は呆気にとられ、一瞬相手の言ってることに反応できなかった。
アイロンはごくごく普通の、日常の家事の一部で、高度なテクニック、専門性
を伴うものではないし、危険極まる行為でもない。
アイロンがかけられない家政婦って…
しかしその時の私は背に腹は代えられない状態だった。
電話口の相手に「定期的に家政婦を派遣するには、これからスタッフの
スケジュールを調整するため少しお時間を頂きます。安井さんは新規の方
ですのでまずは一度お試しの形でご利用頂いてはどうでしょうか」
と提案され、了承した。
予定の日に来た巳浦さんの印象は正直薄い。きちんとやってくれたし
何より「ひまわり」のような無言の早く自立しなさい、というプレッシャー
がないのが良かった。ただ、普通に色々やってくれるのに何故アイロンが
かけられないのかはとても不思議だった。
結果から言うと、「たんぽぽ」の利用はその一回で終わった。
「たんぽぽ」から、私の条件に合ったスタッフを見つけられなかった
(アイロンの件ではなく、スケジュール上)と言われたこと、
また費用面での躊躇も大きかった。
私は他の手段を考えなくてはならなかった。