今週のお題「好きな街」ー我が千代田区に誉ありー
今週のお題「好きな街」
親も夫も転勤族で、色々な土地に住んだ。引っ越し回数は10本の指では足らない。
転勤先で近隣県への旅行もしたので、47都道府県制覇… とまでは行かないものの、それなりに様々な場所に行った。
その中でも思い出すと心の中がほの温かくなる、特別な存在が小学校~中学まで住んでいた千代田区 四ツ谷市ヶ谷界隈だ(東京都)
当時も土地柄オフィスビルが多かったが、それでも小さな個人商店や一戸建て住宅もあり、町工場も残っていた。
今風にいえば多様性に富んだ町であった。
赤坂迎賓館、改築前のイグナチオ教会、雙葉学園は子供心にもとてもエキゾチックで異国への憧憬をかきたてられた。
反面、お寺や由緒ありげなお屋敷もあり、地名も江戸時代に起源を持っていた。
外堀跡を通る時、親が江戸城との関り、由来を説明してくれた事もあった。
四ツ谷怪談ってこの辺りの話だよ、と言われ怖い思いをした。
都心にもかかわらず東郷公園、清水谷公園と言った緑にも恵まれていた。
特に清水谷公園は、すぐそばに大型ホテルや高速道路があるとはとても思えないような自然あふれる公園で、起伏にも富んでいてかくれんぼには最高だった。
またあてどなく散歩をしているとここそこに「滝廉太郎旧居の地」「塙保己一和学
講談所跡」などの碑が建っていて、良く意味が分からいながらも諸々の由緒のある文化的な土地であることが感じられた。
電車の駅の利用も楽しかった。
JR市ヶ谷駅のホームに立つと、目の前に釣り堀が広がる。いつか釣りをしたいなぁと思いつつ出来ないまま今に至っている。
地下鉄丸の内線四ツ谷駅は、地上にあるので電車に乗っているといきなり明るい空間がぱっと広がるのが好きだった。暗闇から一転して車窓の外に桜の花びらが舞う。外堀グラウンドでスポーツを楽しむ人々が見える。
千代田区歌は「新日本の心臓部」「国の要と人も見む」と矜持満載の歌詞で、何となく住んでいるだけで、歌を歌っているだけで誇らしげな気持ちになったものだ。
タイトルに入れた「我が千代田区に誉あり」も歌詞の一節である。作詩 佐藤 春夫 作曲 山田 耕筰という豪華メンバーだ。
現在用事があってその近辺に足を運ぶと、町工場や個人商店はほぼ無くなっている。
迎賓館は元の通りだが、イグナチオ教会は立て直されて外観が変わった。
私が住んでいたマンションも取り壊され、地面を見るとようやく礎石の名残が
認められるだけだ。ますますオフィス化が進んでいるように見える。
とは言え、公園はそのまま残っているし、少数だが威厳のあるたたずまいを残した
お屋敷もある。それらは記憶のままである。ちょっと足を延ばすと駄菓子屋もあったのだが、場所の記憶が定かでない。さすがに令和の今は残っていないだろう。
当時の友人で同じ場所に住んでいる人は殆どいないが、ここに××ちゃんの家があった、○○ちゃんの自宅(商店だった)があったなと思い出を手繰りながら歩くのはとても楽しい。
背も伸び、お化粧をして外見が変わってしまった幼馴染に昔の面影を探そう
とするようなものだ。
同じ道を何べんも行きつ戻りつするので怪しい人に見えているかもしれない。
私がその場所に行って楽しいのは、きっとそこで過ごした時間が幸せで満ち足りたものであったからなのだと思う。
私は自分の懐かしい記憶を探して現在に重ねながら歩くのが面白いのだから、誰かがそのルートを散策したとして、その人が私と同じように楽しいのかは疑問だ。
きっとその人にはその人の大切な場所があるだろうから。
そうそう、「どんな街に住みたい」というお題だったが、とってもこの界隈の
物件には手が出せません(笑)
ふるさとは遠きにありて思ふ物