そううつ色々図鑑ーメンヘラ歴1/4世紀ー

双極性障害持ちゆえに出会った色々な人たち、出来事について。精神科入院生活の有様。サイテーな家事・育児についても。

作業療法5+患者図鑑17 折り紙

折り紙

作業療法に参加するメンバーはだいたい決まっていた。興味のないプログラムは

無理に参加しないので習字はA、B、C、Dさん、カラオケならA、B、E、F、Gさんが常連といった具合だ。

私に取っては、上手に字が書けると嬉しいなとか、素敵な塗り絵が出来ると

枕元に貼ったりとちょっとした気分転換で、それ以上でも以下でもなかったように

思う。

しかし前書いたお買い物レクのように、作業療法が生活していく上のスキル

を身につける、切実な手法になることもある。

プログラムが折り紙の時、看護師に付き添われてきた女性がいた。看護師はその人

のケアを細かく作業療法士に言い置いて去って行った。折り紙は、自分で好きな

物を折ってもいいし、本を見て難しい物に挑戦してもいい。

皆、好きな折り紙を選んだり本を見たりして何を折ろうか思案している。

しかしその女性(仮に名取さんとする)は、能面のような無表情で、椅子に座って

身じろぎもしない。富山先生(作業療法士)が「名取さん、今日は折り紙なんですよ。

何を折られます?」と言っても視線も合わせずぴくりとも表情を動かさない。

富山先生は色とりどりの折り紙を名取さんの目の前に置いて「好きなのを選んで頂いていいのですよ」と言うと、やっと指を伸ばして一枚の折り紙に触れた。

「簡単なものにしましょうか?兜はどうですか?」と促され、折る事になった。

兜はさして難しい折り紙ではないけれど、名取さんは一折一折、声がけして手助け

して長い時間かけてゆっくりゆっくり折って行った。随分時間をかけて兜が出来上がった。「出来ましたね!素敵ですね」と富山先生が声をかけると、わずかに名取さんの

表情が緩んだように見えた。富山先生は看護師に連絡をいれ、迎えに来ることを頼んだ。来た護師も、折り紙を見て褒めた。

名取さんの病気が何なのかは分からないけれど、兜を一つ折った事で彼女が

少しでも達成感を感じていたのなら作業療法は功を奏したことになる。名取さんが療法を通じて出来る事が増えて行くといいなと思った。