そううつ色々図鑑ーメンヘラ歴1/4世紀ー

双極性障害持ちゆえに出会った色々な人たち、出来事について。精神科入院生活の有様。サイテーな家事・育児についても。

患者図鑑53 禁断の外出2

おもてなし

複数で、人目のある所で会うのは全く構わなかったが、人目のない空間で野津さんと

二人きりになるのは不安だった。

そもそも、外出届で行き先に「野津さん宅」と書けば確実に却下されるだろう。

私が外出届について指摘すると、野津さんは「適当に、買い物とか書けばいいじゃない」と言う。そんな嘘までついて野津さんの家に行く必要があるのだろうか。

野津さんが私に来て欲しい理由は以下だった。

「大分家に帰っていない。家の中がぐちゃぐちゃになっていると思うから、片づけたい。でも、一人だとちゃんと出来る気がしない。手伝わなくてもいいから、安井さんが

来てくれて、そばに居てくれたら整理が出来ると思う」というのだ。

私は野津さんとはそんな深く長い付き合いでもないのに(野津さんは長く入院していた)何故私が嘘までついて、野津さんの家に行かなきゃいけないのか。

野津さんが私が行く事に固執すれば固執するほど、こちらの腰は引けて行く。

「えっと、こんどの水曜は買い物に行くから」「なら木曜でもいいから」野津さんは

なかなか諦めない。今週中はどうしても駄目、と虚実取り交ぜて理由をつけたら、

やっとため息をついて断念した。

 

その後、こっそり看護師の下野さんに「野津さんに内緒で自宅に来るように言われたんですけれど」と打ち明けた。下野さんは「それはとても危険よ。患者の、特に一人暮らしの患者の家に行っては駄目。虚偽の行き先を書くのは勿論禁止よ。何かあったらどうするの」野津さんの誘いを断ったのは正解だった。

(文中は全て仮名・仮称です)