患者図鑑52 禁断の外出1
外出の可・不可は主治医の判断による。不可であれば勿論病院内にいるしかないし、
可であっても出かけない人もいる。
私は初めは様子見で院内にいるように言われたが、そのうち半日外出→一日外出→外泊とステップを踏んでいった。外泊(自宅泊)も、一泊から初めて段々増やしていく。
外出の場合、出勤・登校など事情のある場合を除き、朝食を終えてから夕食の時間までが基準だった。届ければ、夕飯は外ですませて来ることもできる。消灯時間までに帰るのは絶対だった。
外出届は前日までに看護師を通じて提出する。外出の開始時間と終了時間、行き先、連絡先(自分の携帯番号)を書く。病院を出る時と帰る時、ナースステーションで看護師にサインを貰う。
外出と言っても、自宅・買い物、たまに気晴らしに少し離れた公園に行くくらいだった。
ある時、時々話す仲になっていた野津さんが深刻な表情をして私に顔を寄せて来た。
「安井さん、自由に外出できるんでしょ?」「はい、そうですけど」
その時点では私は一日外出は、自分が好きなように利用できるようになっていた。
「今度、私の家に来て欲しいんだけど」私はちょっとびっくりした。野津さんは
離婚して、子供も独立して一人暮らしだと言っていた。病気は統合失調症で、
以前は小さいお店をしていたけれど、病気が酷くなって今は仕事はしていないそうだ。
他の患者も交えて野津さんと外食をしたことはあるけれど、野津さんの家で二人きり
というのは…
(文中は全て仮名・仮称です)