患者図鑑25 バカンス
患者の吉見さんは、ボブヘアの快活でお話好きな人だった。
良く食堂で患者仲間とけらけら笑い合っていた。打ち解けるようになって話を
聞くと、旦那さんと大学生の息子さんの3人暮らし。毎年9月くらいになると一か月くらい入院するのがお決まりだと言う。
病名はうつ病だそうだが、普段はボランティア、趣味、パートの仕事までしているというのでびっくりだ。私は散々ブログに書いてきたけれど、寝たきり状態で酷い時は
歯磨きや洗面、着替えすらできなかったのだから。
吉見さんの入院は恒例なので、その間はパートやボランティアもお休みにしているという。
「でも、パート先からどうしてもこの日は人が足りないって言われると行ってる」そうだ。
入院中も、ぐったり寝たきりだったり、青白い顔をして病院に籠りきりの人たちを尻目に、今日はカラオケ、明日はショッピングと毎日出歩いていた。私も一度映画に誘われ、同行した事があるが、ポップコーンを抱えて、笑い転げている彼女を見ると
入院患者には見えなかった。
彼女が言うには、年に一度、一か月の休みがどうしても必要なのだそうだ。それでリフレッシュしてあとの11か月を乗り切れる。休止期間がないと、どこかで不具合を起こしてしまうそうだ。
それで彼女が他の期間を無事に暮らせるのなら、一か月の休養も悪くはないのだろう。
うまく入院を自分を良い状態に保つために使っているのだと思った。
でも、せっかく一か月休暇を取るのならテレビもない相部屋で、あまりおいしくない
病院食ではなくて、豪華なスイートルーム、プールでもついてお食事もレストランでの
ほうがいいな(笑)
(文中は全て仮名・仮称です)