精神科初潜入(一ノ瀬先生) セレブなクリニック
のち複数の精神科を受診することになるのであるが、今から思っても
ここのクリニックは少し変わっていた。
高級マンションの一室にあって、一見普通の住宅である。
ドアをあけても病院らしさはなく、リビングルーム・応接室にあたる
ところに医師の椅子と患者の椅子がある。絨毯がひかれ、調度品がおかれ、
ちょっとセレブなお宅訪問のていだ。
椅子も少し高級な客様用の家具で、病院にありがちなパイプ椅子や丸椅子ではない。
医師も白衣を着ておらず、机もはさまずふかふか椅子に座って対峙する。
これは緊張させないような仕様であろうか… などと冷静に考えられたのは
あとあとの事。
この日も子供を抱きつつ、滂沱の涙を流しながら苦しさを延々と訴えた。
一ノ瀬先生(仮名)は顔色一つ変えず「そうですか。では気持ちが楽になるお薬を二種類出します。
一週間分で。すぐには利きませんが、一週間~二週間で楽になってきますから。
何かあったら一週間前にでも来てください」