そううつ色々図鑑ーメンヘラ歴1/4世紀ー

双極性障害持ちゆえに出会った色々な人たち、出来事について。精神科入院生活の有様。サイテーな家事・育児についても。

精神科医六人目(八木医師) 魔女の館

九鬼保健師と面談した翌日、さっそく八木クリニックへ向かった。

診療は5時までとなっていたが、その一時間前に着いて受付を済ませた。

30分ほど待たされて名前を呼ばれた。

診察室に足を踏み入れて、たじろいだ。

クリニックはビルの二階にあるのだが、窓一面に暗幕のような

ものが張られ、外の明かりが一切入らないようになっているのだ。

薄暗い中、大きなライト(唯一の照明)を背にした八木医師(女医)

の姿がぼうっと浮かび上がっていた。

腰まであろうかと言うウェーブのかかったバサバサのロングヘアで

.やり過ぎなほどのきつめの、派手なメイクをしていた。

クレオパトラのようなアイライン。真っ赤な口紅。

ラメの入った、長い付け爪も目立っていた。

白衣を着ていたかどうかは覚えていないが、スパンコールのついた黒いローブ

がお似合いのいで立ちで、目の前に水晶玉がないのが不思議なくらいだ。

「占いの館」「魔女」私の頭にまず浮かんだのはそれだった。

(と言えるのは今だからで、当時は緊張と驚きでそんな事を思う余裕はなかった)

 

私が椅子に座ると、医師は「で?」と水を向けてきた。

「あの、子供を産んでからずっと調子が悪くて…」と話し始めると

涙がこぼれはじめた。言葉が途切れ途切れになった。

「ちょっと!!あのね、あなたの時間ゆっくり聞いてる時間ないのよ!」

占い師はいきなり遮った。怒鳴った。

一ノ瀬医師も、三井医師も初診だけは長めに時間をとって話を聞いてくれた。

私は診察終了一時間前に来院している。時間がないってどういう事か。

まずこのおかしな部屋、異様な医師の恰好は何なのか。

この魔女は話を聞いてくれない。聞くつもりもない。そもそもまともに

見えない。私は話を早々に切り上げた。

「じゃ、薬二週間分出すから」私は診察室を追い出された。

薬って、ろくに私の話も聞いていないのに。薬の名前、効用、一切説明がなかったのに。

明るい光の射す待合室に出て、ようやく魔窟から抜けて来たような気がした。

意外な事に、受付のスタッフはにこやかでとても感じがいい。

その時はまだ三井クリニックを切っておらず、手持ちの薬があったので

魔女の処方箋は捨てた。

 

後日譚:九鬼保健師にはのち報告の為訪れた。八木医師の酷い対応、異様な

いで立ち。九鬼氏はとてもびっくりして、「私の担当した人が良いと

言っていたのでお勧めしたのですが、申し訳なかったです」と謝っていた。