患者図鑑3 小指イタタ
A病院の待合で印象に残った患者さんの続き。
五藤先生の診療曜日は決まっており、予め予約をいれている。
予約のサイクルが合ったのか、良く待合室で顔を合わせる女性がいた。
彫が深い顔立ちで綺麗な方なのだが、いつも厳しいしかめつらを
していた。
例えればちょうど小指を角にぶつけて「痛っ」という瞬間の顔だ。
なかなかその瞬間の(不快MAXの)表情をそのまま保つのは大変で
疲れると思うのだが、彼女はその表情を保って全く崩れず、かつ別の
表情を見せた事がなかった。
口元は今にも文句を吐きそうに半開きになっていて、これもその形で
固定されていた。
待ち時間は本を読んだりスマホをいじる人も多いのだが、
彼女は何もいじらず、いつも同じ表情でただ座っていた。
そののち、サイクルがずれたのか彼女には会わなくなった。
あの厳しいしかめつらがなくなった時が彼女の病気が改善された
時なのだろうか。