患者図鑑4 ナンパおじいさん
誰にでも話しかける患者さんは他科でも見かけたことがあるので、
今回の事例は精神科に特有なことではないかもしれない。
前項で書いたように、受診サイクルが一緒になると同じ患者さんと
待合室で居合わせる事が出てくる。
その人はおじいさんと言っていい年頃の人で、いつもくしゃくしゃの
帽子をかぶった痩せた人だった。
そのおじいさんは待っている女性(必ず女性。なのでナンパと書いた)
にランダムに話しかける。でも話しかけるといっても、全く一方的な、おじいさん自身の個人的な内容を支離滅裂に、身振り手振り交えて甲高い声でまくしたてるだけなのである。近所の様子、日々の不満、自分の信条、自分の過去、そう言った内容で、
話は脈絡なくあっちこっちに飛んでいた。
相手とはほどんど目も合わさない。ただ、時々「ねえ!」「そうなんだよ!」と時折
相槌は求める。
相手が診察の順番が回って席を立つと、空に向かって話し始める。
一定時間たち、相手になりそうな女性が見つかると、隣に移動しまた始まる。
先程話した内容と全く同じ事だったり、違う事だったりする。
私も話しかけられたことがあるが、おじいさんの勢いと剣幕にとても
やめてくださいとは言えず、適当に相槌を打ち、ひたすら診察の順番を待った。
迷惑至極なのだが、待合室は混んでいて空いている席もあまりなく、
無下にしても面倒なことになりそうなので、ターゲットになった女性たちは適当にいなしていた。
看護師さんにその男性に困ると伝え、他からもクレームが来たのだろうか。
そのうちその男性と一緒になることは無くなった。
次は入院譚について書くつもりです。