そううつ色々図鑑ーメンヘラ歴1/4世紀ー

双極性障害持ちゆえに出会った色々な人たち、出来事について。精神科入院生活の有様。サイテーな家事・育児についても。

保健師図鑑3(金子さん)壊れたレコード

頑張ってる方たちもたくさんいると思うけれど、

コロナの昨今保健師たちの奮闘も報道されているけれど、

十勝さんといいい、今回取り上げる金子(仮名)さんといい、

保健師には当たりはずれがある気がする。

一つは保健師が忙しすぎるのだろう。

見える部分だけでも乳児検診や健康相談、講習会など

事業満載であり、各保健師に振り割られた担当エリア(●●町一丁目など)

がとても広く、一人ではとてもカバーしきれないようだ。

見えない部分の仕事もたくさんあるだろう。

待っていても、保健師は決してあちらからは来てくれない。

こちらから保健所に出向いて訴えなくてはいけない。

三者の訴えがあって初めて腰を上げる場合もある。

 

親身になってれる人にたまたまあたっても、異動してしまい

引継ぎがうまくなされないこともある。

金子保健師は、こちらから出向いて訴えたにもかかわらず、空しい結果に

終わったパターンだった。

時系列的には十勝保健師より少し前になると思う。

ちょうど長子敏記が小学校低学年、次子茂洋が保育園だった。

月一回行われるの育児相談の予約を取った。

敏記は友人宅に遊びに行っていたので、茂洋の手を引いて行って赴いた。

その時私は非常に精神状態が悪かった。通院はしていたが、

毎日がつらくてつらくて仕方がなかった。

育児相談に行って、アドバイスでももらえれば、と藁をも掴む

心境で行ったのだ。

黒縁の眼鏡をかけた、まだ若い金子という保健師が担当だった。

本当に辛い時は、言葉を自由に発する事が出来ない。話をうまくまとめる

事が出来ない。

「死にたいんです」まず私の口をついて出たのはその言葉だった。

「この子(連れていた茂洋)を連れて死にたいんです。死にたいんです」

顔中涙でぐちゃぐちゃにしながら「死にたいんです」だけを私は繰り返した。

実際自分の頭の中は希死念慮で一杯だった。

茂洋にそんな姿を見せるのは到底好ましいことではないが、その時は

そんなに配慮する余裕もなかった。

「死にたいんです 死にたいんです」

壊れたレコードのように繰り返す私と向き合った金子氏は

「そうですか」「はい」を平坦に、単調に返答するだけだった。

「死にたいんです」「はい」「死にたいんです」「そうですか」

そこから一歩も進まない。つるつるした壁に、立たない爪を立てようとあがいている

気がした。

子供と死にたい気持ちがあるのを諫めるのでもいい。もう少し治療を頑張ってみる

助言でもいい。また、睡眠や食事を取れているか詳細を確認するのでもいい。

そう言った事は一切なく、私が「死にたいんです」を繰り返すのに呼応するように

金子保健師は「はい」を機械の様に繰り返した。

七瀬先生のカウンセリングを受けていたから、傾聴や共感される感覚は

分かっているつもりであった。しかし金子氏の「はい」はいずれでもなかった。

「ここでは、これ以外に育児相談はないんですか?」

不毛の問答の末に私は聞いた。

「ありますけど… 牛込(仮名)先生という方が月二回くらい来ています。

でも、どちらかと言うと発達に問題のあるお子さん向けの『発達相談』

ですね」

発達に特に問題を感じたことはなかった。というより発達面にまで子供の様子に

配慮できる余力がなかった。しかしもしかして、うつ状態の自分の影響で

子供の発達に支障が生じていたら?

そんな不安から『発達相談』の予約を入れて貰った。

 

牛込先生の発達相談には、二人の子を連れてしばらく通った。

部屋の遊具で遊んでいる二人を見て、先生は「お子さんは発達に問題

ありませんよ」と安心させてくれた。

精神科の医師やカウンセラーは子供自身に会った事は一度もなかったから

実際の子供を見ての一言は大変有難かった。それに加え私の落ち込みや焦燥を

辛抱強く聞いてくれた。カウンセラーのような、精神安定剤のような存在だった。

その後、牛込先生の都合がつかなくなったとかでこの保健所の

「発達相談」自体が終了になった。

 

にしても「死にたい」と訴える来訪者に対し「はい」しか返さない

保健師の対応はどうなのだろう?金子氏の考えていたことが分からない。

「はい、どうぞ」と言われるよりはましか。