作業療法3+患者図鑑15 天川さんからの迷惑なプレゼント
精神科で入院している患者が治療の為に通うのが作業療法室なので、
大小色々なトラブルは常に起きていた。
天川(仮名)さんは、手芸が好きなようで手芸がプログラムの日には必ず参加していた。
その日作る物は、一応作業療法士より提示される。簡単なフェルト細工だったり、編み物だったり、ビーズ細工だったり。作る物は数種提案されるので、皆で一斉に同じ物を作らなくてはいけない訳でもないし、スピードもそれぞれで良かった。一回で仕上げる人もいれば、休む日を挟んで何回もかけてゆっくり仕上げても良かった。
ただ、針やはさみ、編み棒などは作業療法士の居る場でのみ使用可だったので、
途中の物を持ち帰って自室で続きをすることは出来なかった。
天川さんは毎回のように来て、手芸に取り組むのだが必ず途中でやめて帰ってしまう。
それは構わないのだが、その作りかけの作品を、参加している患者誰かに「プレゼント」してから帰ろうとするのだ。
作業療法士の先生が「天川さん、ご自分で持って帰りましょうか。また来て仕上げて
下さい」というと、渋々持ち帰る。
しかし、例えば食堂・談話室、また同室の人などに、看護師の目の届かないところでプレゼントしようとするのだ。作りかけの人形やマスコットを貰っても正直困る。
断ると逆上される。一応受け取ると、会うたびに使ってる?どこに置いている?と矢継ぎ早に質問される。ある時、作りかけのマスコットを仕上げて持ち歩いていた人がいたそうだ。すると天川さんが目ざとく見つけて、勝手に手を加えた、と激怒した由。
ともかく極力天川さんから手芸作品(?)を貰わないようにと皆避けていた。