患者図鑑67 友達の作り方9 ー密やかな友人ー
一番気楽に気安くつきあえているのは梁井さんと弓削さんだ。入院中から何となくうまが合った。連絡先を交換し、退院後も3人で会っている。お互い病気の事は十二分に承知だから気を使わなくてすむのが良い。
初めはもう一人、吉永さんと言う人も交えて4人で会っていた。ところが、ある時から吉永さんと全く連絡が取れなくなった。電話にも出ず、メールにも返信がない。
どうした事かと心配していると、梁井さんにある日突然電話が入ったそうだ。
梁井さんがどうしたの?連絡取れなくて心配していたと告げると、
「良く分からないの。何だか、主人にいきなり知らない所に連れて行かれて…
携帯も、他の持ち物も取り上げられて」
今は退院して、自宅から電話をしているとの事。
話を総合すると、夫に連れられて閉鎖病棟に入院したらしい。
どのくらい入院していたの、どこの病院と聞いても「何だかよく覚えていない。
いつから入ったのかしら?どのくらいいたのかな?」と入院中の記憶があいまいだった
という。その後も何度か梁井さんに連絡が来たが、段々話が支離滅裂になり、最終的に連絡も途絶えてしまった。
話を梁井さんと弓削さんに戻そう。精神疾患を患っている人に気分のアップダウンは良くある事。ドタキャン、遅刻・早退OK。メールなどの返信遅れ・無しも気にしない。梁井さんは体調によって電車など乗り物に乗れなくなる。その時は弓削さんと私が梁井さんの徒歩圏まで行く。食事を一緒にする時は食後の服薬はお約束。
「何飲んでるの?あ、私もそれ処方された事ある」などと盛り上がれる(?)のも入院仲間ならでは。
コロナ以前もそれほど頻繁に会っていた訳ではないし、コロナ以降はメールやラインなどでしか連絡を取っていない。しかし、他の(私の病気を知らせてない)友達には内緒の、密やかで大切な交友関係である。
(文中は全て仮名・仮称です)