患者図鑑100 病院の中心で、愛をさけぶ2
前回からの続き。ゆうじさんと横内さんは幾度となくメッセージをやり取りし、
親密になっていった。
何となくいい感じのやり取りも出て来て、ゆうじさんとの関係を壊したくなくて
横内さんは自分の病名を言えなかった。
「何の病気なの?心配だな」「うん…ちょっと言えない」「難しい病気?」「うん…」
と言った会話を経て、いつの間にかゆうじさんの中では、横内さんーやり取りの中では『みゆきちゃん』(ちなみに横内さんの本名は違う)は、命に関わる難病で余命僅か。
自分に心配をかけまいと病名を教えてくれないし、お見舞いにも行かせてくれない
という事になったらしいのだ。
死を目前にした病気の彼女、それを支える彼氏。会うことはかなわないけれど、僕は最後までみゆきちゃんと励まし続ける… 横内さんも初めからそうしようと思っていた訳ではないのだが、結果的にそんな構図が図らずも出来てしまった。
「みゆきちゃん、諦めちゃだめだよ。僕がついてるから」「僕の命を君に分けてあげたい」「神様に祈るよ。今後一切お願いをかなえてくれなくてもいいから、君を治すことだけかなえて欲しいと」
などという、悲恋ドラマのようなメッセージの数々がゆうじさんから送られてくるそうだ。
あまりに心配し悲しんでくれるゆうじさんに申し訳なくなり、ある時横内さんは返信を返さなくなった。
ゆうじさんとの甘く悲しいやりとりが日課となっていた横内さんはちょっとした虚脱感に襲われたようで、それからしばらく元気がなかった。
前回書いたゆうじさんのスペックも真実かどうか確かめようもないし、ちょっと芝居がかった(失礼)セリフも本心から出ていたのかも分からない、と思っていたが、
ゆうじさんのツイッターアカウントを教えられていた横内さんが連絡を絶ってからアカウントを除くと「病気の彼女と連絡が取れなくなった… もしかして」と嘆き悲しむツイートがあったそうだ。
ゆうじさん、本当はどんな人だったのだろう。
(文中は全て仮名・仮称です)