患者図鑑117 ミステリと言う勿れー黒魔術?-1
B病院の解き明かされてない謎はまだある。
角野さんという入院患者がいた。入院患者は病状や個性もあって、超インドア(食事の時以外はベッドから出ない)から超アウトドアまで色々だった。超アウトドアは、この人入院している意味があるのだろうか、病院には寝に帰っているだけではないかと思わされるくらい外出していた。
インドアも、ベッドの中や病棟内から出ない人たちは純粋ににインドアだが、角野さんはインドア派の中では最も活発で、アウトドア派に近い部類だった。B病院は複数階あり、建物はそこそこ大きい。それに庭がついているから総面積で言えばそれなりの大きさがある。角野さんは、病院のここそこを所狭しとぴゅんぴゅん飛び歩いていた。多分一日のうちに病院を何巡りもしていたと思う。
けれど、病院の敷地からは一歩も踏み出せないのだという。怖い。足がすくむ。行きたくない。病院内を上から下へ、病院の庭も端から端へ駆け巡る角野さんが。不思議なものだ。
そのB病院の敷地内を隅々まで知り尽くす角野さんが、ある時「何か気味悪い」と言って来た。病院の裏庭、目立たず人気もない一角があるのだが、そこが不気味なのだという。人を見かけた事はないが、誰かがいた跡がある。何かを燃やした後。液体をまいた跡。石が積んである。お香のような変な匂いがする。
角野さんの話を聞いていた人が「誰かたばこでも吸っていたんじゃないの」と言った。
病院には喫煙室があるが、狭くていつも人でぎゅうぎゅうだ。目のないところでゆうゆうと吸ったようがゆったりと吸えるだろう。
(文中は全て仮名・仮称です)