そううつ色々図鑑ーメンヘラ歴1/4世紀ー

双極性障害持ちゆえに出会った色々な人たち、出来事について。精神科入院生活の有様。サイテーな家事・育児についても。

患者図鑑123 ミステリと言う勿れー黒魔術?ー2

ミステリー

間に他の記事が入ってしまったが

utuutuyasuyasu.hatenablog.com の続き。

角野さんが、病院内の庭の一角で、不気味な痕跡を見たと怖がっていた話からだ。

角野さんがあんまり怖がるので、何人かで連れだって、問題の場所に行ってみた。

人気のない、薄暗い場所だ。確かに何か燃やしたような跡があって、液体をまいた後もある。石が積んである、と角野さんは言うが確かに石ころは転がっているが、自然にあるようにも見える。お香のようなにおいはしない。

一緒に行った一人、清川さんが「ねぇ、これ髪の毛じゃない??」と地面を指さす。確かに、数本、短い髪の毛のような物が落ちている。でも気味が悪いので、誰も詳細に観察しようとも手に取ってみようとはしない。別の一人、熊野さんは「何か嫌な気を感じる… 誰かに見つめられているような感じがしない?」と言い出す。

皆怖気立って、早々にその場を後にした。

でも、部屋に帰って冷静に思い返すと、誰かがタバコでも吸って、飲みかけのペットボトルの水を捨てたとしたら?石はもともとそこにあって、髪の毛も単なる抜け毛かもしれない。そもそも髪の毛ですらないかもしれない。熊野さんが訴えた「嫌な気配」については、実は私は何も感じなかった。

とは言え、病院で時間がたっぷりとあり、無聊をかこつ患者たちには庭の謎は格好の話題だった。「黒魔術」「何かの秘儀・儀式」「降霊」だとか議論百出だった。○○さんがアヤシイ、いや✕✕さんかも、と根拠のない推測も行われた。

 

しかし、私たちが庭を探検しに行った時に見た物以上は何も出てこず、別に院内で何か困った事や不思議な事が起きた訳ではないので段々とその事は話題に上らなくなっていった。ある意味「学校の怪談」で生徒が盛り上がるようなものだったのだと思う。

決まったメンバーによる定められた空間。余裕のある時間。そんな中では、一種のエンターテインメントとしてこのようなエピソードは常に需要があった。

(文中は全て仮名・仮称です)