そううつ色々図鑑ーメンヘラ歴1/4世紀ー

双極性障害持ちゆえに出会った色々な人たち、出来事について。精神科入院生活の有様。サイテーな家事・育児についても。

患者図鑑125 病人対決

認知症

B病院(精神科単科病院)で知り合った、かずみさんから連絡が来た。かずみさんは60代の独身女性。お父様はもう10年ほど前に亡くなり、お母様との二人暮らしだ。

ご兄弟はいるが、遠方であまりつきあいはないらしい。

 

かずみさんは、憤懣やるかたない様子で訴えて来る。

かずみさんのお母様、よしえさんは80代。足腰も弱って来て、高血圧などの持病もあるが何より認知症が進んで来たのが問題だそうだ。かずみさんは自分もメンタルを患っているが(障害年金を受けている)、お母さんの世話を一手に担って来た。

しかし認知症のお母様は、被害妄想や物取られ妄想が出て来て、日ごとに酷くなっているそうだ。二人暮らしなので、矛先ははかずみさんだ。

「あなた、私の通帳印鑑どこにやったの!警察に訴える!」「財布に三万入っていたはずなのに、二万しか残っていない。あなたのせい」その他、昨日医者に連れて行ったばかりなのに「かずみは私が具合が悪いのに医者にも連れていかない」「ご飯も食べさせない」(三度三度の食事はかずみさんが作って、お母様も食べている)など、今日天気が悪いのも物価が上がったのもかずみさんの責任になりそうな勢いなのだと言う。

よしえさんは、バッグに通帳や印鑑、財布と言った全財産を入れている。それをどこかにしまい込んだのをかずみさんのせいにすることもあるが、バッグを取ったでしょ!と糾弾する当のよしえさんの首にバッグが下がっていた事もあったという。

かずみさんは、勿論物忘れ外来によしえさんを受診させている。もう毎日のように泥棒扱い、悪党扱いされて疲れ果てた、と医師に言うと「お母さんは認知症ですからね。それは症状なんですよ。お母さんは病人なんだから、そう思って…」と医師が言いかけたところでかずみさんは爆発したそうだ。

「先生!母は病気だっていいますが、私だって病人なんです!病院通ってるし薬も飲んでます」

確かに「病人」と、「健康な人」という間柄なら、健康な人が病人を労り、多少の我慢や無理をして看病や世話をする図式もあるだろう。しかしかずみさんも病人。自分も病人なのに、人負担を強いられるのはおかしい、とかずみさんは異を唱えたのだ。

「で、そう言ったらそのお医者さんなんていったの?」と聞くと

「黙っちゃった。でもお医者さんが何と言おうと、私が病気だろうと現状は変わらないんだよね。相変わらず母は私を悪者扱いするし。もうやってられないよ」

お母さんはデイサービスに行くのも、ヘルパーを家に入れるのも猛反対なのだという。

もう詰んだわ、とかずみさんはため息をついた。

(文中は全て仮名・仮称です)