患者図鑑135 ゲームの魅力2
前回からの続き。
多木君は何か月と言う単位で入院していたので、もしかしたら大学は休学していたのかもしれない。印象に残っているのは、学校の友人と思われる若い男性が何人か連れだって良く多木君の見舞いに来ていた事だ。
面会エリアは男女共通の談話室(病室に入るのはNG)なので、他患者の面会の光景は同性であっても異性であっても目にする事が出来る。
メンタルの病気、精神科単科病院というと、少し心理的にハードル、抵抗がある人もいると思うのだが、屈託なく笑っている見舞客を見ていると、多木君はいいお友達に恵まれているのだな、と羨ましく見えた。そしてこういう友人の存在が、病院での治療以外にも多木君の健康回復に大きな役割を果たしてくれるだろうと期待した。
私は多木君より先に退院したので、彼がいつ退院したのか、どんな風に良くなったのかは分からない。退院してから、病棟にお見舞いに行って多木君の話題がたまたま出て、退院したという事だけは分かった。
今後多木君がゲームと上手に付き合い方を学んで、ふとしたきっかけで今回のような沼にはまり込まなければいいのだけれど。ゲーム機は手軽に手に入るし(大学生ならちょっとバイトすればすぐ買える)、新しいソフトも次々出ているから、手に入れる機会は常にある。
私も多木君レベルまで行った事はないが、(やるのはRPGくらいである)やっていてとても楽しくて、気がつくと深夜2時3時までやっていたり、家事が全くおろそかで家の中がぐちゃぐちゃになっていた事があった。
そしてクリアすると、所要時間○時間、というのが画面に出るのだけれどそれを見るといつも複雑な気持ちになっていた。それだけ時間をかけても、「ゲームクリア」という事実の他は何も残らない。
(文中は全て仮名・仮称です)