涙のアンパンマン体操
三井医師のところに通い続けていたが調子ははかばかしくない。
具合が悪いと訴えても、いつもの冗談を聞かされ、薬を変える。
効き目が出るまで1~2週間ほど我慢して服薬するが改善されない。
また医師に訴える。そんなことがずっと繰り返されていた。
その頃の記憶の中で、鮮明に覚えているのが「アンパンマン体操」だ。
最寄りの公民館で週一回「年少児のための遊びの時間」
が設けられていた。
時間の最後に、いつも「アンパンマン体操」が流された。
参加者は円になり、中心に職員が立ち、見本を見せる。
みんなでアンパンマン体操を踊る。
「もし自信をなくしてくじけそうになったら」
まさに当時の自分だった。
「いい事だけ いい事だけ 思い出せ」
いい事を一生懸命に思い出しても、すぐ悲しい、暗い気持ちにかき消されて
しまうのだ。
「アーーーンパンチ!」
アンパンチと共に、抱えている苦しみが消散してくれたら、どんなに嬉しいだろう。
アンパンマン体操と一緒に私はいつも涙をこらえていた。
周りを見渡すと、お母さんも子供も、満面の笑みで踊っている。
自分がみじめで情けなくて仕方なかった。公民館を一歩出ると
涙をとめることが出来ず、ぽろぽろ涙をこぼしながら帰路についた。
ある時とうとう私は「良くならない!」と医師の前で泣き叫んでしまい、
ぐちゃぐちゃの顔のまま帰宅して、そのまま布団につっぷして泣いていた。
帰宅した夫がそれをみて酷く心配し、転院を考えるようになった。