精神科医五人目(六会医師) お縄になったら来てください
他の科でも言える事であろうが、こと精神科に関しては主治医との相性は重要
だと思う。ラポール(調和した関係)が築けるか。信頼がおけるか。腹を割って話せるか。例えば皮膚科でとてもぶっきらぼうで無礼な医師が居たとして、湿疹を
みて軟膏を出す。湿疹が治る。それならそれでいいだろう。
しかし精神疾患の場合は、ぶっきらぼうで無礼な態度を取られた時点で病状に
悪影響を及ぼしかねない。
一ノ瀬医師が「子供は手元で育てる」という価値観を持っていたが、
患者の価値観も受容、すり合わせが出来ればいう事はない。
むしろこの医師にかかったら病気が悪化するのでは?と呆れた医師の例を
あげよう。この人の場合相性以前の問題かもしれない。
敏記(長子)が小学校の頃、抜毛症と思われる行為が見られ、紹介されて六会
クリニック(仮名)を受診した。
六会医師は、私が説明を始めるいとまも与えずに「え!?学校行けてるんでしょ!?
警察の世話になってる訳でもないんでしょ!?じゃあいいじゃないですか」
と矢継ぎ早に言い放ち、私たちは診察室を追い出された。
学校に行けなくなる前に、警察の世話になる前にしかるべき治療を施すのが
医師の仕事ではないのか?
あっけに取られつつ辺りを見回すと、蹴られたのか殴られたのか、壁や扉に凹んだ跡や壊れた跡がある。一つや二つではない。かつ全く手当てされていない。
この荒れた様子に驚いていると、大きな叫び声がした。男性患者が六会医師を
呼んでいるのだ。「おい!まだ話終わってないぞ!」
六会医師が会計事務員の後ろに立つ。
患者「もう一回診察室で話があるから」
医師「話はここで」
その後は会計カウンターを挟んでどなり合いだ。まだ話は終わってない、
もう言う事はない、そんな応酬が続く中、私は敏記とそそくさとクリニックを
後にした。
後に五藤医師にふと六会クリニックの事を話すと、言葉を濁しながらも
「あー、あそこはね…」と顔をしかめた。
あのぼこぼこになった診察室で、六会医師が荒んだ治療をしていないと良いのだが。