精神科医七人目(島根医師)「優しい」先生ー医師選びのヒントー
夫の転勤先D県は、初めて訪れる土地であった。親戚や友人もいなかった。
今まで頼っていた「つばき」とも別れ、不安は大きかった。が、結果
から言うと援助を受けずとも家事面は何とかしのぎ、また毎日の生活は楽しく
過ごすことができた。
理由は住んだ家がとても便利な立地にあり、スーパー、コンビニ、病院、公園、
学校が至近距離にあった事。近所の方が転勤者の私たち家族にとても親切
にして下さり、親子共に友人に恵まれた事。
気候も人も穏やかなその地で旅行したり、温泉に入りに行った日々は今でも良い
思い出になっている。
主治医の五藤医師
からは転勤先で通院を続けるよう言われたが、未知の土地で
どこの病院に通えば良いかわからない。五藤医師自身も具体的な心当たりはないと言う。取り敢えず宛先無しの紹介状を貰った。
転居前に自立支援
の変更などで保健所を訪ね、新しい通院先を探す不安を吐露した。すると
対応した保健師はちょっとしたヒントをくれた。
本来、保健所(保健師)は特定の病院やクリニックは紹介しない。近くには
○○と××がありますがと伝えるだけだそうだ。でも、と保健師は続けた。
「『優しい』先生を紹介して下さい、とお願いしてみてください」という
アドバイスだった。
D県に引っ越し、地元の保健所に電話をした。精神科にかかってきた事、紹介状があること。新しい通院先を探したいが「優しい先生」がいい事。
電話口の保健師はちょっと考えてから、「安井さんのお宅の近くではE医院やFクリニックもありますけれど、●●町の島根クリニック(仮称)の先生は優しいですよ」
保健師さんの親切に感謝しつつ、島根クリニックを受診することにした。
※次に転勤したG県では「優しい先生」紹介の手は通じなかった
島根クリニックはバスで20分くらいのところにあった。待合室では緊張したが
保健師の「優しい先生」の言葉に励まされつつ待っていた。
順番になり呼ばれ、診察室に入る。島根先生は「どうも、初めまして」と先生の
方から先に頭を下げた。クリニックのロゴ入りのボールペンを下さった。
「優しくていい人」一見してそんな印象を持った。こちらが恐縮するほど
腰が低く、物腰は柔らかだった。いつも穏やかに十分に話を聞いてくれた。
五藤医師の持つ豪快さやリーダーシップ的な物には欠けるが、いつも
安心して通院することができた。
カウンセラーは置いていないクリニックなので、いつも受診して薬を貰う
流れであった。
2年ほどに及ぶD県での生活が、未知の地であったにもかかわらず、家事援助を使うこともなく無事に楽しく過ごせたのは、前述した恵まれた環境と「優しい」島根先生の
お蔭だと思っている。