患者図鑑12 ファッショナブルな田村さん
入院生活とは言え、生活にメリハリをつける為、医師からは朝起きたら
着替えて、寝る前に寝巻を着るように言われた。
これは以前A病院に居た時も同様だった。
他の入院患者も、同じように生活リズムを整える着替えの指示を受けていたようだ。
若干名、日夜問わず寝巻で過ごしていた人もいたが。
着替えると言っても、殆どは病棟内で過ごすのだし、時々横になったりもする。
洗濯もしなくてはならない(病棟内に共用の洗濯機や干場があった)。
私を含め、皆動きやすく洗濯しやすいルームウェアやジャージのような物を
来ていた。ちなみに、履物はスリッパだ。
そのゆるゆる普段着の入院患者の中で、一人異彩を放つ服装の人がいた。
田村(仮名)さんだ。田村さんは50~60代に見えた。ロングヘア―の巻髪、
毎日の念入りのメイクもさることながら、目立っていたのはファッションだ。
前述したように、Tシャツにジャージのズボンと言った格好の人が多い中、
田村さんはシルクのブラウスにスカーフ、フレアースカートと言ったブランド物を日替わりで身にまとっていた。どこかにお出かけするのでおめかししているのかしら、
と言う様な格好を毎日していだのだ。
毎日の服装に、いちいち彼女自身の説明がついていて「これは××(高級ブランド名)外国で買ったの。これは○○(やはりブランド名)で△△円もしたけど、お気に入りなの」
それが毎日だ。田村さんのクローゼットは無限で、次から次へ新しい高級ブランドの服が出てくる。
さっき、履物がスリッパだと書いたが、殆どの患者がいわゆる「スリッパ」を履く中で
田村さんはピンヒールのサンダルを履いてカツカツと音を立てて闊歩していた。
田村さんの信奉者もいた、あのブランドの服は凄く高いし、ショップも
少ないのよとひどく感服していた。
アンチもいて、こんな(笑)病院であんなにめかし込んでどうするのかしら。
TPOって物を知らないんじゃない?と嘲っていた。