そううつ色々図鑑ーメンヘラ歴1/4世紀ー

双極性障害持ちゆえに出会った色々な人たち、出来事について。精神科入院生活の有様。サイテーな家事・育児についても。

患者図鑑40 病院の怪談その3

トイレ

小谷さんは、ご両親などのサポートもあり、精神的に大分持ち直して退院していった。

明るい顔で「離婚、成立しそうです!」と報告に来てくれた。

 

怪談の本題に戻ろう。自殺の話を出したのは、患者同士で雑談している時に、

何度もB病院に入退院を繰り返している「古株」(そういう人たちから見たら、私は「新米」「新参者」であった)の一人の島崎さんが「そう言えば、あの角のトイレで前首吊りあったよねぇ」と言い出した。その「角のトイレ」は、私もいつも使っているトイレだ。同じく雑談に参加していたキャリアウーマンの蓮尾さん

utuutuyasuyasu.hatenablog.com

も、「あったあった。角倉さんだっけ?」と同調する。蓮尾さんは冗談やからかいを言う人ではない。あのトイレでそんな事があったとは…

「左手の、端から何番目の個室だっけ?」と話が進み、私は「やめて下さい!」と懇願した。もうトイレに行けなくなってしまうではないか。もしかしたら今まで「現場」の個室を既に使っていたかもしれないけれど…

私にとってはとても怖くて深刻な話題だったのに、島崎さんたちは何事もなかったかのように次の話題(確かコンビニで売っている菓子の話題)に移っていった。彼女たちの間で病院内での自殺とコンビニの菓子の話題の重要さ、重さは大して変わらないようだった。

「角のトイレ」は、女性棟の部分ではフロア唯一のトイレで、そこを避けるとしたら違うフロアに行かなくてはならない。もし夜に照明を落とした病院内で違うフロアにトイレの為に行くとしたら、それはそれで恐怖だ。

島崎さんたちもいつも「角のトイレ」を普通に使っていたし、そこで誰かが怖い体験をしたという話も聞かない。「左手の端から何番目」といいかけた言葉はしっかり覚えていて、必ず右手の一番手前の個室を使うようにした。