患者図鑑50 机上の空論3
以上が根来さんの家庭事情だが、私もうつに苦しみ始めてから各所で
「机上の空論」を感じ、それに苦しめられて来た。
第二子出産後、うつで二谷医師(産婦人科)を受診し
「最近のお母さんは大人になりきらないで子供産んじゃうからねえ!困ったもんだ」と
暴言(?)を吐かれた話は書いた。
今思えば「じゃ、先生や先生の奥様はどれほどご立派なのでしょう?万端に準備された完全無欠なご両親なのですね」と毒づきたくもなる。
「保育園に入れるのは子供が可哀想でしょう?」と言った一ノ瀬医師。
では寝たきりの親の側でろくろく面倒も見て貰えない状態が良いのか?保育園に
入っている子は全員可哀想なのか?
他に、保健所や保育園の指導で「子供とじっくり向き合って」「規則正しい生活」「栄養に配慮した手作りの料理」と御託を並べられるたびに、実行できない自分を責め、じくじたる思いだった。
しかし、これも今にして思えば「じゃ、保健師さん(保育士さん)はさぞ非の打ちどころがない育児をしていらっしゃるのでしょうね」と皮肉を言いたくなる。
一ノ瀬・二谷医師の時も、保健所・保育園の時も心身共に弱り切っていたので、もやもやをかかえつつ何も言えなかったのだが。
教科書通り、理想通り行うのがとても難しい場合は多々あるし(しかもその教科書にあした所で、根来さんのお父さんのような人が書いていたりするのだ)、お手本通りするよう責めたり強要するのはいかがなものかと思う。
私は「自分と子供が死なない」事を最低限の目的として、何とか日々を凌いできた。
最低限これをやりましょう(最低ライン)ここまで出来ると理想的ですね(最高ライン)を示して、その間に何とか収まればいい、そういう指導は出来ないものだろうか。
(文中は全て仮名・仮称です)