そううつ色々図鑑ーメンヘラ歴1/4世紀ー

双極性障害持ちゆえに出会った色々な人たち、出来事について。精神科入院生活の有様。サイテーな家事・育児についても。

患者図鑑87 添田さんの愛読書

 

ヌード

 添田さんは白髪頭で大分髪が薄くなっていたので、多分そこそこ年は行っていたのだろう。男性患者なので、食堂や洗面所で一緒になる事はなかったが、男女ともに使用する談話室で良く見かけた。

 ちょうど談話室常連の小野寺さん

utuutuyasuyasu.hatenablog.com 

が退院して、入れ替わりのタイミングで談話室に現れるようになった。

上記の記事に書いたように、小野寺さんは新聞に執着(?)していたが、添田さんのそれは「エロ本」だった。

 談話室には、長椅子の他に低いテーブルがあるのだが、そこに決まってエロ本を開いて読んでいた。エロ本も色々グレードがあるのだろうけれど(笑)、添田さんの愛読書は(まじまじと見た訳ではないが)けっこうえげつない物だった。あられもない姿の女性のグラビアだ、女性患者の間では非常に不評で、看護師にセクハラだ、不快だと文句を言いに行く人もいた。確かに共用のスペースでエロ本を堂々と、毎日のように拡げれいるのは問題と思われて看護師もやんわりと添田さんに注意した。

しかし翌日も、またその次の日も何事も無かったように添田さんは愛読書を携えて談話室に現れるのだ。女性の前でわざと下ねたを披露して、狼狽したり嫌がる姿を喜ぶ男性がいるが、添田さんはそんな様子でもない。周りに気を配ることなく、エロ本を見つめている。目をぎらつかせてみている様でも、興奮しているようでもない。恥ずかしがってもいない。枯れて何事にも無関心に見える添田さん。一方決して手放さない、過激なエロ本。そのミスマッチ。何故エロ本が愛読書なのだろう。いろいろ不思議だった。

 しかし、今まで書いてきた患者図鑑の人々もそうだが、初めは面喰っていてもだんだん見慣れて来てしまうものだ。添田さんがエロ本を拡げていても、風景の一部と化し気にならなくなっていった。

 しかし、新しく入院した女性患者は何気なく談話室に行き「添田さんと愛読書」を目にし、少なからずショックを受けるのがお約束であった。

(文中は全て仮名・仮称です)