精神科入院生活
主治医の外出許可さえあれば、外出(もしくは外泊も)自由に出来た。 気分転換や楽しみとして少なくない患者がしていたのが外食だ。 前に記事にした、居酒屋TはB病院入院患者御用達だったし utuutuyasuyasu.hatenablog.com 他にも近場・美味しい・お手頃価格…
相部屋に入院している場合、カーテンで区切られたスペースが自分のプライベートエリアになる。どのくらいの広さか、ちゃんと測った事はないが検索してみたら4.3㎡から、6.4㎡以上に移行する事を目指すという記事が見つかったので、多分B病院の一人当たりのス…
B病院の作業療法にはカラオケがあるのだが utuutuyasuyasu.hatenablog.com カラオケルームではないので曲数が多い訳でも最新の曲が有る訳でもなく、 どちらかというと年配者が懐メロを歌う場となっていた。 若い世代は、ポータブルオーディオプレイヤーやス…
前回に続きファッションの話題。ゆるゆる普段着の人が多い中で、ファッショナブルな田村さんや陸岡さんが目立っていたのは言うまでもないが、流川さんも目を引いていた。 流川さんもすらっとして手足が長いスタイルのいい人なのだが、いかんぜん来ている物が…
入院中の患者は、日中はゆったりしたルームウェアやジャージが多い事は以前書いた。その中で、高級ブランドをとっかえひっかえ身にまとう田村さんが場違いに見えた事も。 utuutuyasuyasu.hatenablog.com もう一人ファッションリーダー(?)陸岡さんがいた。…
子供の頃、長机に何人か並んで座って「ここからは自分の場所だから!」と鉛筆で線を 引いたり、隣の人を押しの行けたりした経験はないだろうか?嵐田さんはまさにその人で、食事の際はちょうどトレイの大きさが自分のスペースと同等になっていたから良いのだ…
前回からの続き。ゆうじさんと横内さんは幾度となくメッセージをやり取りし、 親密になっていった。 何となくいい感じのやり取りも出て来て、ゆうじさんとの関係を壊したくなくて 横内さんは自分の病名を言えなかった。 「何の病気なの?心配だな」「うん…ち…
こうやってブログを書いていると、色々な患者の事がふっと思い出される。今回はたまたま思い出した横内さんという女性患者について書く。 入院患者、上杉さんがフェイク設定で男性から人気を集め色々やり取りをしていた話は以前書いた。 utuutuyasuyasu.hate…
初老男性の弓月さんとは時々談話室で顔を合わせた。 談話室へ行って、弓月さんの姿を見かけると少し憂鬱な気分になる。 弓月さんは、いちいち自分がこれからしようとする事、感じる事を大声で 口にするのだ。例えば 「大便がしたくなった!大便に行ってくる…
病院グルメパート3。刑務所の食事は、おかずの交換が禁止だそうだがB病院ではそういう決まりはなく、食べきれないものや嫌いなものを他の人とのやりとりは自由だった。時々出されるジョアのブルーベリー味を免田さんはこよなく愛していた。それを知ってジョ…
少し間が空いてしまったが、病院食グルメの続き。 utuutuyasuyasu.hatenablog.com 上記記事では食パンの焼き方にこだわる壷井さんの話だったが、入院生活の数少ない楽しみ、食事時間を少しでも充実させようと工夫する人は少なくない。 グルメ1にも書いたが…
星さんの自己紹介によると、四国出身。大学進学時に上京し、就職したが 段々と心のバランスが崩れて来て精神科を受診。病状ははかばかしくなく 入退院を繰り返して今に至るとの事だった。 星さんは故郷のX県には長年帰っていないという。両親を始め、兄弟や…
「岸壁の母」とは、Wikipediaによれば第二次世界大戦、ソ連(当時)による抑留から解放され、引揚船で帰ってくる息子の帰りを待つ母親をマスコミ等が取り上げた呼称。その一人である端野いせをモデルとして流行歌(1954年など)、映画作品のタイトルともなっ…
豊平さん、推定40代の女性は摂食障害のようだった。他の疾患も持っているのかもしれないが、それは分からない。 豊平さんが摂食障害と思われたのは、三度の食事の時に全く出された物に箸をつけない事もあれば(看護師に少しでも食べるよう促されていた)、…
他の病院食の例にもれず、B病院でも食事はおいしくはない。そして、一種類のみで選択の用地は無い。 これも何度か書いてきたが、消化器などの疾患ではないので、皆食欲旺盛だった。そしておいしくはなくとも、食事は入院生活の中で楽しみなイベントの一つだ…
私はあまり男性患者との交流はなかったけれど、数少ないよく話した相手が月島さんだった。月島さんは35歳だと言っていた。 何かのきっかけで月島さんが東海地方の某都市の出身と知り、そこは私の母の出身地で私も祖父母や親戚を訪れる為良く行った土地なので…
高石さんは、うつ病で入退院を繰り返している人だった。20歳の頃から30年以上病気を患っていると言う。(1/4世紀の私より先輩だ!) 独身で、兄弟はいない上に父親を高校生の頃に亡くし、肉親は母親のみ。しかし詳しい事情は分からないが、母親とも疎遠にな…
添田さんは白髪頭で大分髪が薄くなっていたので、多分そこそこ年は行っていたのだろう。男性患者なので、食堂や洗面所で一緒になる事はなかったが、男女ともに使用する談話室で良く見かけた。 ちょうど談話室常連の小野寺さん utuutuyasuyasu.hatenablog.com…
渋川さんにとって不倶戴天の敵は「カルジャダン」だ。渋川さんはいつも いつもいまいましげにカルジャダンへの憎しみと嫌悪を語る。 「カルジャダンがもう頭に来るの。いい加減にして欲しい。もうどこかに行って!」 「いいかげん何とかして欲しいわよね。も…
B病院では、カレーなどの場合を除いて食事の際にプラスチック製の箸がついてくる。 財津さんは食事の前に決まった儀式がある。箸を捧げ持って。時計回りに4回回してから食べ始める。食べ終わったら、また箸を取り4回回して終了。 何かに似ているなぁ、と思…
「えー-っ、芥子川さんより凄いって何ですか?」と私は聞いた。 「皇族のご落胤とか?」 「それより凄いよ。自分は神様の化身だっていうの」 私は絶句した。 その人は小暮さんという初老の女性なのだけれど、自分は木花開耶姫(コノハナサクヤヒメ)の化身…
芥子川さんの自慢は「私の先祖は義経と静御前なの!」であった。日本史の中でも人気を誇る義経と静御前。その末裔が自分だというのである。 確かに義経と静御前は恋愛関係にあったし、男児も生まれた。しかし当時もう義経は罪人であったので、子供は生まれて…
熊谷さんの素顔を知る者は誰もいなかった。入院患者は、ノーメイクの人も多く、メイクしていてもせいぜい眉を書いたり口紅を塗る程度。しかし熊谷さんは常にばっちりと フルメイクをしていた。つけまつげまでしているくらいだ。 薄いメイクをしている人も、…
粕谷さんはセミロングのボブで、前髪をかなり厚く作っていた。なので額は全く見えない。が、粕谷さんと話していると、しきりに額に手をやっている。 かゆいのかしら、何かできものでもあるのかしらと思っていたが、あまりに頻繁でかつ 毎日である。 ある日、…
翌朝、「昨夜随分看護師さんバタバタしてたよね」と話題に上がった。 梁井さんが寝不足顔で「うちの部屋なの」と話し始めた。 夜中に喜多さんが起き上がり、荷物をまとめはじめた。そしてナースコールを 押し、看護師を呼んで「もう退院の時間ですよね?支度…
手を洗い続ける大坪さんも、縫いぐるみに話しかける江橋さんも見慣れてしまえば 気にならない。ここは精神科の病院なので、ちょっと変わった事をする人がいるのは 当たり前で、それがその人の「いつものやり方」だと分かればこちらも平常心で受け止める。 新…
手洗いの他にも色々こだわりがあるようだった。 例えば、食堂に向かう時、きっかり○歩で席につければ良いが、何かの都合で一歩二歩 、歩数が足りなかったり多かったりすれば病室に戻ってもう一度やり直す。 また、歩き出す時は「必ず右足から」というこだわ…
という訳で、私の外泊は失敗に終わり、次の外泊やそれに連なる退院はお預けになった。 また入院生活が続く事になるので、患者図鑑に戻る。 「強迫性障害」という病名を聞かれた事はあるだろうか。 厚生労働省のホームページに記載があったのでリンクを張って…
病院にいたら消灯は9時。まだまだ寝たくない。起きていられる。私は動画サイトを見まくった。二か月見ていなかったが、どんどん新しい動画がアップされている。 カラオケを歌いまくり、曲に合わせて踊った。お笑い動画を見て笑い転げた。 録画しておいたテレ…
そうこうしているうちに、主治医から外泊の許可が出た。 入院の基本的な流れとしては 院内のみで行動。 ↓ 作業療法などの活動許可 ↓ 半日外出許可 ↓ 一日外出許可 ↓ 外泊(自宅)一泊 と進む。一泊から、二泊、三泊と段々と伸ばしていく。 数泊の外泊がスム…